【出版】日本中觀宗 三論宗 玄叡《大乘三論大義鈔》疏文斷句 - 《大乗三論大義鈔》略論

《大乗三論大義鈔》略論:

日本三論宗と玄叡律師の伝略

『大乗三論大義鈔』は日本の玄叡律師が主に三論宗の立場から、当時の日本南都六宗である法相宗・天台宗・真言宗・華厳宗の論疏を融合し、弁駁したものである。全546問答に及び、大抵は彼が立てた二十類義の諍論を離れない。ここでの「諍」とは、直言による糾正や規勧を指し、『新唐書』巻164〈崔玄亮伝〉にある「玄亮は諫官を率いて延英に苦諍し、反復して数百言を述べた」との記述のように、一般的な争いの意味ではない。玄叡律師は本論中で「諍論は自己他宗への執着から疑心が生じることに起因する。各自が自義に執着し他宗に対して偏った誤解を起こすため、諍論が始まる。諍論とはそういう意味ではないか。執着は愛見の根本であり、愛見は衆苦の本である。よってこれは議論すべきでない」と述べている。

二十類義は以下の通りである:

一、八不義
二、二諦義
三、二智義
四、方言義
五、仏性義
六、不二義
七、容入義
八、一乗義
九、教跡義
十、三身義
十一、空有諍論
十二、常無常諍論
十三、五性是非諍論
十四、有性無性諍論
十五、定不定性諍論
十六、変易生死諍論
十七、三一権実諍論
十八、三四車諍論
十九、教時諍論
二十、説不説諍論

日本の西大寺では毎月三日間の読経会を七百五十年途絶えることなく開催している。玄叡律師は平安時代前期の西大寺における三論宗の宗匠であった。彼の著作『大乗三論大義鈔』は当時、「天長六本宗書」(別名「天長勅撰六本宗書」)の一つに数えられている。

天長7年(西暦830年)に編纂された「天長六本宗書」(実際には七巻あるが、南都六宗を主体とするため六本宗書と呼ばれる):

一、真言宗 空海『秘密曼荼羅十住心論』十巻
二、真言宗 空海『秘蔵宝鑰』一巻
三、天台宗 義真『天台法華宗義集』一巻
四、法相宗 護命『大乗法相研神章』五巻
五、三論宗 玄叡『大乗三論大義鈔』四巻
六、華厳宗 普機『華厳一乗開心論』六巻
七、律宗 豊安『戒律伝来記』三巻

かつて日本南都七大寺の一つであった西大寺は、現在では近鉄奈良線の大和西大寺駅から徒歩3〜5分で到着できる。京都からの所要時間は約30〜40分ほどである。現代の西大寺は真言律宗の総本山であり、真言律宗は興正菩薩叡尊律師によって創始された。

仏教正史に基づく日本三論宗と玄叡律師についての要点は以下の通りである:

一、『三国仏法伝通縁起』巻2:「弘仁聖代、玄叡律師は三論大義抄四巻を制作し、勅詔を奉じて造った。法隆学問寺はもと元弘三論宗、布貴道詮および貞玄律師らが所属し、法隆寺の三論宗である。近代の弘法相宗は昔より太子三経疏を学び、元興寺本学三論を平城都に移し、三論を専ら弘めている。」

二、『朝鮮仏教通史』巻3:「【三論宗】推古天皇33年、高句麗の沙門恵観が日本に至り、元興寺にて三論宗を弘めたのが日本の開宗である。唐から三論宗が伝わったのは三度あり、一は恵観僧正による伝承、二は智蔵僧正による伝承(智蔵は恵観の法孫で唐に渡り三論を受け継ぐ)、三は道慈律師による伝承である。道慈は智蔵の弟子で、文武天皇大宝元年に入唐して六宗を総伝し、三論を本宗とした。帰朝後は大安寺で弘通した。名哲、西大寺玄叡律師、法隆寺道詮律師らがその俊秀である。中古には東大寺のみが伝わり、その他は滅び、現在は全く存在しない。」

三、『大日本仏教全書』第111巻『三論祖師伝集』下所収「三論師資伝」:
(略。内容は天皇代の仏法伝来と元興寺三論宗の系譜について詳細に述べる)

四、日本『国史大辞典』によると、三論宗は仏教の一派であり、日本南都六宗、中国十三宗の一つである。インドの龍樹菩薩の『中論』・『十二門論』とその弟子提婆の『百論』の三部の論著に基づくため三論宗と呼ばれる。インドでは中観宗と称され、空義哲学を基盤とし、智慧と諸行無常を根本とする。経典の価値を高低で分ける他宗に対し、三論宗は執着から離れることを目的にし、特にこの世の現象が空であることを強調する。

三論宗は4世紀中頃に『百論』『十二門論』が盛行し、5世紀初に鳩摩羅什により漢訳され研究された。後に道生・雲済・法朗らが伝え、隋朝の嘉祥大師吉蔵が三論宗の体系化を行い、宗祖とされる。吉蔵は釈迦の教理を唯一の理として掲げ、二諦八不を最高思想とし、偏執の破邪顕正を宗旨とした。

日本への伝来は吉蔵の弟子で聖徳太子の師である高麗僧恵灌に始まる。推古天皇33年(625年)に三論を伝え、飛鳥元興寺に住し、後に河内国井上寺へ移った。大化2年(646年)に宮中で三論を講じた。入唐して求法した僧智蔵は恵灌の法脈から出て、法隆寺に留まり教えを広め、元興寺流と呼ばれた。

一方、智蔵に学んだ道慈は大宝2年(702年)に入唐し、吉蔵の法孫元康に三論を学び、平城右京の大安寺を建立。天平9年(737年)4月に大般若会を創設し三論宗を宣伝した。この流派から善議・安澄・勤操らが輩出し、大安寺流派と呼ばれる。

法相宗と共に日本古代国家仏教の基礎を築いた。天平19年(729年)2月の伽藍起資財帳などには三論衆と別三論衆の名が見え、少なくとも二つの学派の存在が法脈と教理の違いによって推定される。

三論宗の名称は正倉院文書の天平勝宝4年(752年)に初めて現れ、六宗厨子に関する彩色冊、東大寺三論宗牒、六宗布施法の記録に含まれている。学派成立は天平勝宝3年頃とされ、大仏開眼供養を目標に東大寺で設立された。

無相の宗教と称される本宗は、法相宗の教義推進によって衰退した。延暦17年(798年)、21年(802年)、22年(803年)に再興計画があり、大同元年(806年)には太政官が五宗12人の年度者中三論宗を三人に定め、その中には成実宗専門僧侶も含まれた。成実宗は教理の類似から三論宗の付宗とされた。

弘仁4年(813年)1月の御斎会では勤操が「三論宗は祖君の宗」と宣揚し、西大寺玄叡著『三論大義鈔』、願暁著『金光明最勝王経玄枢』を説いた。彼の門下に聖宝が現れ、東大寺に東南院を建立し、同院を三論宗本所とした。延久3年(1071年)には元興寺・大安寺の三論宗が吸収され、その後覚樹・永観・珍海らが現れ、鎌倉時代には聖守、室町中期には英憲・英訓の学匠が輩出したが、次第に衰退し江戸時代末期に絶えた。

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【参考文献】
『三論祖師伝集』(『大日本仏教全書』)
『三国仏法伝通縁起』(同)
井上光貞「南都六宗の成立」(『日本古代思想史の研究』所収)
(堀池春峰)

 

『楞嚴経』の真偽について

なお、本論では特に『楞嚴経』の真偽に関して論証と弁駁を行っている。詳細は本論の第427〜433問答を参照されたい。主に清辨菩薩の立量を以て『楞嚴経』の真実性を証明し、また日本の諸師の証論にも言及している。現代において偽書とされるものには、『智論』『瑜伽』『華厳』『宝積』『般若』『浄土』などの諸経、『大集』やさらには漢語の『阿毘達磨』までもが偽とされている。しかし仏教の三蔵はもともと多くの人によって編纂されたものであり、一人の独書ではない。例えば『大毘婆沙』は五百人の阿羅漢によって集められたが、南伝ではそれらを認めず偽書とする説もある。語系や伝承が異なれば、どのように真偽を証明できるのか。また口伝に依る場合、果たしてそれは町の噂話のようなものではないかと考える者が多い。

さらに現存する梵文資料に依拠しようとしても、文化大革命により各寺院の梵文典籍は焼失し、洛陽の白馬寺では2万余巻の梵文が焼かれた。これをどう検証できるのか。現在のネパールには10万巻以上の梵文典籍が翻訳待ちのまま保存されているが、すぐに検証できる状況にはない。西域の中アジア諸国において地下に梵文典籍が保存されている可能性もあり、後世の発掘を待つしかない。したがって、現存の梵文資料のみを根拠にすることはあまりにも大雑把で断定的すぎる。資料の真実性が確かでなければ、真実であるならば必ずすべての正しい形が現れるはずである。

玄叡法師は本論において次のように結んでいる。「拙い箒を宝とするのは誤りであり、偽造の言を起こすのは妄執である。燕石の蔵匿を愛し、徒らに無間の語を伝えることは、当時に虚業を結び、後世に醜声を流布することであり、法を誹謗する因となり、無間の報いを招くのは如何ともしがたいことである。これは人の仕業である。」これは確かに学ぶ者が深く考えるに値する言葉である。

また、真偽を考えるよりもむしろ、三法印・四法印の義に合致しているかを問うべきである。三法印・四法印の義に適合するものはすべて仏教三蔵の義として受け入れられるべきである。もしそうでなければ、三蔵は後世多くの人によって編纂されたものに過ぎず、どうして真に仏が存在し、菩薩の義があると知り得るだろうか。このような考証の心で信仰を生じないならば、多くの考証は必ず敬仰と信心を失わせ、やがてすべての三蔵は世俗の作り話の無意味な言葉としてみなされるだろう。なぜならば、往生浄土の者が現に己の前に現れるかどうかを見なければ、やがて必ず信仰は退転するからである。相(かたち)を希求し、疑問を考証によって印証し喜び、それによってこの道の真理を追求しなくなるのだ。

「千年前には空有の争いに携わる者は少数であったが、千年後にはその類は多い」とも言われている。これもまたその意味に鑑みるべきであろう。

 

深密一乗は真実に顕れた一乗である

故・印順法師は日本三論宗の玄叡を誤解している。印順法師の『華雨香雲』巻三にはこうある:「日本の三論作家では玄叡と珍海に及ぶ者はない。玄叡は『三論大義鈔』を著し、空有の弁に非常に勤勉で、論旨は精緻で引証も詳しく、必読の書である。しかし『解深密経』を密意の一乗説とみなすのは、嘉祥大師の旨を誤っている。」

しかし、玄叡の『大乗三論大義鈔』(『大日本仏教全書』第075冊『大乗三論大義鈔 三論玄疏文義要』98ページ上方)内文を検討すると、玄叡法師はこう述べている:

「問:解深密が説く一乗は、法華経が明らかにする一乗と同じか異なるか?
答:異なる。深密一乗はこれが真実に顕れた一乗である。法華の一乗は密意の未了の一乗である。

問:顕密の趣旨が理解できない。説明してほしい。誤解が生じないように。
答:解深密経は諸利根大菩薩のために三乗の実有を顕演し、真如を趣旨としており、別異がない。これを一乗と説くゆえに、これは究竟に顕れた乗である。

法華経は鈍根の声聞を誘引するために、三乗の実有を方便として説き、密説で唯一の一乗を説くので、これは密意の未了の一乗である。」

玄叡律師は本論〈三一権実諍論第七〉問512~514の中で、「深密一乗は真実に顕れた一乗であり、法華一乗は密意の未了の一乗である」としている。すなわち彼らは『解深密経』を「真実に顕れた一乗」と認めており、印順法師が言う「密意の一乗」とは異なる。今後、印順法師の『華雨香雲』が再校訂され出版されることを望む。

また、玄叡律師は本書において三論法義の引用に留まらず、法相宗の問答形式を多用して種々の破難を行っている。彼は中観・唯識を通暁し、単に三論に偏らない師であると推察される。さらに玄叡師は『楞嚴経』に対して清辨の立量を根拠に真経であることを種々証明するという会通の形式を取っており、これもまた別の会通の方式である。

 

成実論は声聞乗である

本論第015問から018問は主に『成実論』がなぜ大乗ではなく声聞乗に属するのかを説明している。特に第016問では大乗・小乗の二つの空義の差異を挙げている。例えば以下のように述べている:

二つの空を辨じるが、二空は異なり、大まかに四種類ある:
一、小乗は法の空を折伏し、大乗は本性の空である。
二、小乗は三界の内にある人法の二空のみを明らかにし、その空義は短い。大乗は三界の内外の人法の二空を通明し、その空義は長い。
三、小乗の人は空についてのみ語り、不空については語らない。大乗は空を明らかにし、不空も説く。
四、小乗はただ空であるが、空に住する故である。大乗は不可得の空と名付け、空もまた空である故である。

以上より、『成実論』は二空を辨じるが、空義の別により大乗と小乗に分かれることがわかる。

 

結論:

『大乗三論大義鈔』は三論宗の法義によって各宗の差異を論述するだけでなく、玄叡律師は諸宗の義も会通している。実際に千年以上にわたり多くの争論があったが、三性・三無性、 『楞嚴経』の偽経論争、『成実論』が大乗か否か、種子の有無、法身と三身の差異、仏種性の有無、各宗の仏性義の定義、世俗諦と勝義諦、一乗と三乗の義、さらには龍樹の『中観』における八不義など、学び手にとって本論は三論宗を主軸とした中観学の法義を確立し、各宗の差異を徐々に明らかにする論述である。

2021年8月16日
台湾にて

 
 
 
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《中論研習》

《中論研習》序文、引言

《中論研習》-觀因緣品第一(十六偈)

《中論研習》-觀去來品第二(二十五偈)

《中論研習》-觀六情品第三(八偈)

《中論研習》-觀五陰(五蘊)品第四(九偈)

《中論研習》-觀六種品第五(八偈)

《中論研習》-觀染染者品第六(十偈)

《中論研習》-觀三相品第七(三十五偈)

《中論研習》-觀作作者品第八(十二偈)

《中論研習》-觀本住品第九(十二偈)

《中論研習》-觀燃可燃品第十(十六偈)

《中論研習》-觀本際品第十一(八偈)

《中論研習》-觀苦品第十二(十偈)

《中論研習》-觀行品第十三(九偈)

《中論研習》-觀合品第十四(八偈)

《中論研習》-觀有無品第十五(十一偈)

《中論研習》-觀縛解品第十六(十偈)

《中論研習》-觀業品第十七(三十三偈)

《中論研習》-觀法品第十八(十二偈)

《中論研習》-觀時品第十九(六偈)

《中論研習》-觀因果品第二十(二十四偈)

《中論研習》-觀成壞品第二十一(二十偈)

《中論研習》-觀如來品第二十二(十六偈)

《中論研習》-觀顛倒品第二十三(二十四偈)

《中論研習》-觀四諦品第二十四(四十偈)

《中論研習》-觀涅槃品第二十五(二十四偈)

《中論研習》-觀十二因緣品第二十六(九偈)

《中論研習》-觀邪見品第二十七(三十一偈)

《中論研習》-參考文獻

《成唯識論述記集成編對讀》
 
 
《玄奘三藏譯撰全集》
 
《天台智者大師全集》
 
《三論宗吉藏大師合集》
 
 
 
 《菩薩藏佛教學會完整出版法寶書目》